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オタクサイト「笑ウ門」のオタク管理人ヲユキのオランダ生活的オタク日記です。
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続きにスネハーSSです。

最終巻の余韻が引く衝動で書いた。
スネハー好きとしてあのラストに後悔はしてない。
むしろ同人(ファンの妄想)を飛び越えて完結させたJKローリング女史はマジで凄い。
一人ひとりのキャラへの愛情が半端無い。
こういう丁寧な作者の思い入れがある作品は、読者にとっても幸せなことだと思う。


あんな人間がこの世に二人もいるとは夢にも思わなかった。
そして自分がまた出会うとは。

今度は歳こそ大きく違う、だが酷く落ち着かない気分にさせられた。
利発で正義感が強く、マグルの両親に生まれて健やかに愛されてきた少女。
冷たくあしらうにも何故か他と違って心に小さな罪悪感を覚える、つまり酷く苦手なタイプだ。

10年近くホグワーツに勤める中でマグル生まれの生徒は沢山見てきた。その中に優秀な子も勿論多くいた。
しかし、自分に面と向かって臆せず立ち向かってきたのは彼女だけだ。

「先生!」

彼女が東から来れば西を向いて無視。

「スネイプ先生ってば!」

前に回りこんでくるなら得意の眉間皺を一層深くして無言で睥睨。
しかしそんなもの、この馬鹿娘には通用しない。
授業中は空気すら読まない、寮内で煙たがられても気にしない、我が道を行くのみ。それで今は自分の道を塞いでる。

「先生、昨日の放課後はどこにいらしたんですか。魔法薬学教室にも職員室にも先生の研究室にもいらっしゃいませんでしたけど。」

多くの生徒は自分を見ればその道を避け、遠回りしに踵を返す。お陰で今も廊下に他に人はいない。

「ミス・グレンジャー、それが君と何の関係が有るのかね?」

冷たく突っぱねるための声は、少女の熱い声にぶつかった後上滑りしてどこかへ吸い込まれてしまった。

「はい、どうしても分からないところがあったのでお聞きしたかったんです。本当は昨日の内に知りたかったのですが、でも今日教えていただければ大丈夫です。ご存知ですか?この本とこっちの本のここの部分なんですが…」

そう言って腕に抱えていた5冊の分厚い本を床に下ろすとその中の二冊をその場で開き始めた。
ここで教えろと言うのか…。

「この薬草の効能について二つの本で言ってる事が若干噛み合わないんです。そうするとこっちの本で載ってる魔法に納得がいかなくて、それが気になったら夜も眠れなくって。本物の薬草が手に入れば試してみたいんですけど、希少種のものですし私には難しくて。」

熱っぽく本を見つめて喋り続ける少女を何度目かで漸く遮った。

「…分かった、分かったからとりあえず研究室に来なさい。」

「はい!」

その言葉を待っていたとばかりに跳ね上がった顔はキラキラした瞳と満面の笑みでいっぱいの光に満ちていた。
自分に向かってこんな顔をする生徒は今までいなかった。
だから一層狂いそうになる調子を、顔を引き締めて出来るだけ鬱陶しげにマントを払うことで立て直す。
少女も本を急いで掻き集めると弾むように立ち上がる。
さっさと歩き出した自分の後ろをとっとと付いてくる。
まるで犬みたいだ。ペットを持った事はないがそんな事を思った。

何がそんなに嬉しいのだろう。
何がこうも彼女を突き動かしているのだろう。

学習意欲が、知性への情熱が、こんな幼い少女の全てで良いのだろうか。
もっと友人とお喋りするとか、スポーツや趣味に熱中する方が、この歳の女の子には健康的な気がするのだが。



「君はよくよく頑張り屋に優しいのう。」

突飛な言葉にはあ?と顔だけで応えるにとどめた。

「持って生まれた才能を更に伸ばそうとするには努力するしかない。それを育てるのは周りの力も必要じゃ。理解し叱咤してくれる先達がの。じゃからわしは君が教職に就いてくれたのも天の采配じゃと思っておるよ。」

「それはそれは光栄なお言葉で、誠に身に余ります。生徒や他の教師陣からそのように励まされた事などない身としましては一層に。」

はっとせせら笑って校長を見た。
彼は自嘲する自分の態度など慣れた物で、涼しい顔で紅茶に口をつける。

「いやいや、君を慕ってる者もちゃーんとおるよ。そう卑下するものでもなかろう。」

お世辞にしてもそれは無い。スリザリンの生徒は慕っていると言うより服従していると言った方が近い。彼らには寄り木が他にないのだから当たり前だ。
ドラコの顔をふと思い浮かべた。自分を父親に重ねている少年を。
顔は父親を思い出すが、神経質なあの性格は母親に似たのだろう。
取り巻きは多い子だが、ちゃんと友人を作れるだろうかと秘かに気を揉んでいた。
対等の、心を開ける相手を。

「私の保護など当てにしてるうちはその生徒には不幸としか言いようがありませんな。なにしろこうも先行きの危うい身ですから。」

「ではハーマイオニー・グレンジャーにはそのうちもう一つ図書館を用意せねばならんかな。」

突然その名前が出たので思わず、がちゃんと音を立てて手にしていったポットを下ろした。

「まあ本で知識は補えても、君なしではあの子もさぞ寂しかろう。せっかく勉学以上の興味を覚えた相手だというに、先行き不透明の存在では仕方ないかな。」

「なななななな、なん」

「それでも君は長生きする事じゃな。女の子は恋を経てこれから綺麗になっていくことじゃろうに、その顔を曇らせるのは余りに酷いと思わんか。」

「わわわわわわ、我輩は」

「まだまだ君の人生も捨てたものじゃないと言うことじゃよセブルス。教師とは生徒に教えられるものの方が多いからのう。彼女の目を通して見た君は、きっと君自身が知らない自分じゃ。君がもっと自分の人生に興味を抱いたとてわしはそれを咎めはせん、むしろもっとやれいと誉めたいくらいじゃ。」

沸騰した頭がぐらぐらする。
あまりの事に言葉も無い自分の様子に目を細めて校長はほっほと笑った。
このむかつく思いを目の前の老獪な糞爺にぶちまけたらどんなにスッキリするだろうと思いながら、それをしたら今までの苦闘も水の泡だけどね、と頭の隅で呟く声が自分を辛うじて押しとどめた。
冷静になれ、セブルス・スネイプ!お前なら出来る!

そこにコンコンと小さなノックの音がした。

「先生、グレンジャーです。いらっしゃいますか?」

小さなはきはきとした声に思わず肩がピクリと揺れた。
熱が急に醒めて、今度は酷く寒気がした。が、身震いは何とか堪えた。
キラキラと目を輝かせて校長は立ち上がった。
紅茶はすっかり飲んで茶菓子は綺麗になくなっている。

「ほんに、今年の新入生は個性派揃いじゃのう。」

そう、これがまだ一年目という事実が我輩の胸に重く圧し掛かったのだった。


終われ
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